【なんもくびと】道の駅で「鹿喰めし」を販売する三好直明さん

ご自身が調理した鹿肉のお弁当「鹿喰めし(かじきめし)」を、週末に道の駅「オアシスなんもく」で販売している三好直明(みよしなおあき)さん。鹿肉弁当の販売を始めた理由から苦労話、移住した理由、今後の抱負などを聞いてみました。

南牧村の道の駅「オアシスなんもく」で、土日に鹿肉弁当を販売している三好さん

鹿肉弁当の販売状況

ーまず、鹿肉弁当の販売を始めた理由から教えてください。

三好 私は2017年に地域おこし協力隊として南牧村に移住してきましたが、村内には鹿が多く生息していて狩猟も行っていましたので、鹿肉を特産にできないかと考えました。でも、群馬県には規制があって、捕った鹿肉を加工して販売することはできません。規制解除を待っていても時間がかかるので、他県から仕入れた鹿肉で弁当を作り、試験的に販売してお客様の反応を見ようと思ったんです。

鹿肉はどこから仕入れているのですか?

三好 長野県松本市の加工場です。知人から紹介されたのですが、群馬の近隣から取り寄せたい思いがあったのと、真面目な若者が経営していて信頼できると思い契約しました。鹿肉も臭みがなくて安心できますが、冬場は取扱量が減って一定量の仕入れができないのが難点です。

確かに冬場は、日曜のみの販売でしたね。

三好 この春からは取扱量も元に戻り安定したので、5月から週2回、土日の販売に戻しています。ゴールデンウイークの3連休も販売しましたが、おかげさまで全日完売しました。

鹿肉弁当の調理法は、ご自分で勉強されたのですか?

三好 調理法は、ジビエ協会のワークショップに参加したりネットを見たりして勉強しました。でも、弁当は自己流です。社協の厨房をお借りして何度か作った後、2019年10月に試験的に販売を始め、2020年1月から「山家工房」という屋号で本格的に販売しています。

ー今は、一日に弁当を幾つ販売していますか?

三好 仕入れの量や季節によって変えていますが、10個から15個くらいでしょうか。仕入れから製造、販売まで私一人で手掛けているので、多くても30個が限界です。

ひとりで全ての工程をこなすのは、かなり大変ですね。

三好 「鹿喰めし」の販売日は、朝の2時過ぎに起きて調理を始め、だいたい午前10時から11時の間に道の駅で売り始めます。前日の仕込みまで含めると、一回分の実働は8時間を超えますね。

ちなみに、採算は取れていますか?

三好 弁当販売を始めて3年目ですが、販売数もごく少ないので、これだけで食っていくのは厳しいですね。平日には村内でアルバイトをしているので、トータルで何とか暮らしていけるレベルです。

メガホンを使い鹿肉弁当を宣伝する三好さん

南牧村への移住

ー話は変わりますが、どのようなきっかけで南牧村へ移住されたのですか?

三好 2016年に、村のホームページの古民家バンクに載っていた物件を見学しに村を訪れたことがきっかけですね。高齢化率ナンバーワンの南牧村とはどんな村なのか、もともと興味があったんです。見学に来たら、川沿いに建つ古民家のロケーションがすっかり気に入ってしまい、値段を聞いたら思いのほか安かったので購入しました。それが現在暮らしている馬坂(まさか)の自宅です。でも、古民家を買った時点では、移住までは考えていませんでした。

ー移住を決めた理由を教えてください。

三好 もともと私は伊勢崎市で市会議員を10年勤めた後、介護施設を夫婦で経営していました。そのうちに施設経営が体力的に厳しくなったので、人に譲ることにしたんです。次の仕事を探している時に、たまたま南牧村が地域おこし協力隊を募集していることを知り、古民家を買ったこともあって応募してみたら、採用されました。ちょうど村内に介護施設を新設するタイミングでしたので、私の経験が買われたようです。

ー実際に移住したのはいつ頃ですか?

三好 2017年の5月です。移住当初は鹿肉弁当のことは頭になくて、個人的なフィールドワークの一環だと思っていました。本当は家族も呼びたかったのですが、古民家の改修に手間取ったのと、冬があまりにも寒いので、家族は今も伊勢崎で暮らしています(笑)。私も伊勢崎へはよく帰省していますので、ここ数年は2拠点生活をしています。

今後の抱負

ー最後に、今後の抱負を教えてください。確か、鹿肉料理のレストランを開きたいと前から言ってましたよね?

三好 はい。何とか今年中には飲食店をオープンしたいと考えています。場所は、自宅から車で数分走り、県境を越えた先にある長野県佐久市の広河原という集落です。ここに「禅昌寺」という廃寺があるのですが、境内の空き家を改修して、鹿肉を使った料理を出す店舗を構える予定です。でも、単なる飲食店ではなく、色々なゲストを呼んだり、さまざまな人が集まって互いに学び合える交流拠点のような施設を作りたいんですよね。今はうまく言えませんが、これまでの自分の経験を吐き出せる場所にしたいんです。

ー聞いた限りは漠然としていますが、どんな施設ができるのか、今から楽しみです!

三好 南牧に来て今年で6年目ですが、自分がやりたいことが少しずつ明確になってきていると感じています。うまくいくかどうかわかりませんが、やりきってだめなら方向転換します。自分が面白いと思えることにチャレンジしなければ、ここにいる意味もないですからね。

取材を終えて

三好さんと私は(ほぼ)同年代で移住した年も同じ、住んでいる地区も近いこともあって、当初から親しくさせていただいている。飲食店を開きたいという話は以前から聞いてはいたが、自宅ではなく、新たに場所を借りて店を構えると聞いて驚いた。果たしてどんな店が生まれるのか?オープンした暁には、改めて話を聞いてみたい。

土日に道の駅「オアシスなんもく」に立ち寄った際には、駐車場の傍らで声を張り上げて弁当を売っている三好さんに声をかけて、「鹿喰めし」を試していただきたいと思う。(以上)

「鹿喰めし」の基本情報

販売者:山家工房(代表 三好直明)

販売日:毎週土曜日、日曜日

販売場所と時間:南牧村の道の駅「オアシスなんもく」駐車場内で、午前10時から11時の間に販売を開始、売切次第終了(最大30個限定)

販売価格:1,100円(税込)

鹿喰めし