【なんもくびと】温泉経営と農業の両立により雇用創出をめざす小保方努さん

南牧村に移住して9年。村内のレストランや民宿で働きながら、エゴマや干し芋など農産物の生産にもチャレンジ。2018年からは、有志が手作りで復活させた「星尾温泉 木の葉石の湯(このはいしのゆ)」の管理人も務めている小保方努(おぼかたつとむ)さん。コロナ禍で温泉経営に苦労しながらも、一歩ずつ前に進んでいる現状について聞きました。

小保方さん。星尾温泉の玄関前にて

進化し続けている星尾温泉

ー2018年9月に日帰り温泉として開業した星尾温泉ですが、いまは宿泊もできるんですね。

小保方 温泉施設を作った古民家の2階と離れを2019年に改装して宿泊用の部屋を2つ作りました。現在は1泊2食付きの民宿として提供しています。そのうち1部屋には、温泉に入れる貸切風呂も作りました。

ー民宿は、予約すればいつでも泊まれるのですか?

小保方 はい。いまは全国旅行支援も使えますので、割引価格で宿泊できます。

簡易宿所の室内。ここも全て手作り。

温泉を引いた貸切風呂。窓からは古民家が立ち並ぶ集落が望める。

ーコロナ禍では一時的に休業を余儀なくされて、経営的にも厳しかったと思います。いまの来客状況はいかがですか?

小保方 現在もコロナ禍が続いていますので、高齢者が多い集落の状況も踏まえて、日帰り温泉は金、土、日、祝日のみの営業とし、レストランは休業しています。昨年までは移動制限の影響もあって来客は少なかったですが、今年に入って移動制限が解けてからは、少しずつ客足が戻りつつあります。紅葉シーズンには、県内や県外から多くのお客様にお越しいただきました。常連の方も数名できて、嬉しい限りです。

ー改装工事は、主にどなたが担当されたのですか?

小保方 私と温泉設立メンバーのほかに、有志の方々にもご協力をいただいて、少しずつ工事を進めてきました。

ーそれにしても、全部手作業で作りあげたことに感服します。

小保方 コロナ禍で一時休業していた時に、営業中には困難だった母屋の工事を一気に仕上げることができました。工事を手伝っていただいた方々には感謝しかありません。

「星尾温泉 木の葉石の湯」の紹介

ここで、小保方さんが運営している「星尾温泉木の葉石の湯」について簡単に紹介します。

星尾温泉がある南牧村星尾の仲庭集落には、山麓から湧き出ている温泉(鉱泉)を薪で湧かした共同浴場が、かつて存在していました。「塩水温泉」の名で集落の住民から親しまれ、昭和25年まで使われていたそうです。

昭和25年まで営業していた、かつての塩水温泉

この温泉を復活させたのが、民宿「かじか倶楽部」を営む米田優さんを中心とする「星尾に温泉を作ろうプロジェクト」の十数名のメンバーたち。空いていた築200年の古民家を借りて手作業で改修し、配管で源泉を引き込んで2018年9月にオープンしました。

温泉は源泉かけ流し。源泉の温度は15℃弱で、薪ボイラーでお湯にして浴槽に注いでいます。源泉は鉄分を含み、湯船では空気に触れて赤みがかった色に変わります。泉質は「ナトリウム・カルシウム炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」。さまざまな効能がありますが、体がぽかぽかと温まり、肌がスベスベになるのが特長です。

温泉名に使われている「木の葉石」とは、温泉成分に含まれる炭酸カルシウムが石に付着した木の葉を凝固させることから、地元住民が親しんで使っていた呼称。源泉付近には、温泉成分が作り出したカルスト地形「石灰華段丘(せっかいかだんきゅう)」が見られます。

源泉近くで見られる石灰華段丘

岩盤の上に建つ古民家を改装して作った星尾温泉
コロナ対策済の温泉の受付
脱衣所
浴室。ゆっくり浸かった後は体がポカポカ暖かくなります。

今の暮らしと抱負

小保方さんは2013年に村に移住して以来、民宿「かじか倶楽部」を手伝いながら、エゴマや干し芋といった星尾地区の特産品を昔ながらの製法で作ってきました。温泉開業後は、星尾プロダクツ合同会社を設立して代表に就任。温泉経営に加えて農産物を生産・販売したり、学生を受け入れて自然学習を提供したりと、多忙な日々を過ごしています。

ー温泉の休業日には、主に何をやっていますか?

小保方 12月のいまは、畑で採れたサツマイモを干し芋に加工する作業がピークを迎えています。他にも、温泉を改修したり、薪を確保したりと、やることは盛りだくさんです。

ーいまの課題は何ですか?

小保方 慢性的な人手不足ですかね?温泉や農業といった星尾地区の資源を生かして地域を共に盛り上げていただける人材は、常に募集しています。

ー今後の抱負を教えてください。

小保方 星尾温泉は山里に湧いた素朴な秘湯ですので、収容力には限界があります。温泉経営だけでは厳しいので、今後は民宿の稼働率を高められるようPRしていきたいと思います。提携している民宿「かじか倶楽部」と共に、学生などの団体客を受け入れられる設備や体験メニューも充実させていきたいですね。地域資源も生かした集客モデルをここで作り、私以外の雇用を作っていきたいと思います。

取材を終えて

私は5年前に星尾温泉が建つ仲庭集落に移住してきたが、その時に、村での暮らしかたやDIYなどを色々と教えていただき、何かと助けていただいた師匠が小保方さんだった。いまも同じ集落に住むご近所さんであり、貴重な若手同士(村内で40-50代は若手)かつ飲み仲間でもある。星尾温泉は開業時に少しお手伝いしたこともあり、愛着がある。村内の他の観光資源と合わせてPRをしていきたい。(以上)

駐車場は、星尾温泉入り口のカーブ手前にあります。

2年半前に「かがり火Web」に書いた記事もお読みいただけますと幸いです。

「星尾温泉 木の葉石の湯」の基本情報

住所:群馬県甘楽郡南牧村星尾1162

営業日:金曜、土曜、日曜、祝日
(但し、2022~2023年の年末年始は休業)

営業時間:11:00~18:00 最終受付 17:30
(レストランは当面休業、但し宴会等は予約にて対応)

連絡先:090-4733-4939 (担当:小保方)

星尾温泉の詳細は、ホームページ(以下)をご覧ください。