【なんもくびと】健康長寿のお手伝いをしたい 有賀八重さん(ひまわり高齢者レク支援センター代表)

「なんもくびと」は、南牧村で暮らす方々にお会いして聞いた話をシェアする個人プロジェクトです。

初回は、有賀八重さん。「笑いヨガ」の講師として活動されている有賀さんは、今年になって「ひまわり高齢者レク支援センター」を立ち上げ、高齢者やそのご家族にさまざまな形で元気を届ける活動を始めました。折しも8月8日(土)に、南牧特産の椚石(くぬぎいし)を使った花瓶づくり教室が有賀さん主宰で開催されたので、見学を兼ねて話を聞いてきました。

有賀 八重(あるがやえ)さん。沖縄県から東京都を経て、2018年6月に南牧村へ移住。インドでインストラクターの資格を取った「笑いヨガ」を教えるほか、下仁田ウェブラジオのパーソナリティー、道の駅の販売員など、多様な仕事に携わる。2020年2月、任意団体「ひまわり高齢者レク支援センター」を設立して代表に就任。南牧村大塩沢で、村出身のご主人と二人暮らし。

椚石を使った花瓶教室を開催

-花瓶教室を見学させてもらいましたが、参加者が石を削る作業に没頭する姿が印象的でした。まず、このイベントを企画した理由を教えてください。

昨年、椚石の歴史を伝える「豊栄音楽祭」に参加した時に、今回講師をお願いした青木石材店の青木清二さんとお会いしたのがきっかけです。椚石を削る体験は他ではできないので、椚石をもっと知ってほしいという思いも込めて企画しました。

-今はイベント開催が難しい状況ですが、気を遣うことも多かったのでは?

今回は屋外で行うイベントでしたので、人数を極力絞り、参加者にはマスク着用や感染対策をお願いしました。皆さまにご協力いただき、無事に開催できてホッとしています。(当日の様子はこちら

8月8日に開催された花瓶づくり教室の様子。左は、椚石の歴史を説明する青木清二さん

-アンケートでも、家族ともども楽しめたといった声が多かったですね。有賀さんは笑いヨガの講師として活動されている印象がありますが、今回のようなイベントを開催したのは初めてですか?

はい。私は2018年6月に南牧に移住して以来、村の「いきいきサロン」をはじめ、幾つもの集落で「笑いヨガ」の講師をしてきました。村の方々には活動の場を与えていただき、本当に感謝しています。一方で、サロンを主宰する民生委員の方からは「もっと色々なことをやりたい」といった要望を受けていました。私自身も笑いヨガ以外のイベントをやりたいと思っていましたが、考えるうちに、笑いヨガの仲間が人に教えられそうな資格やスキルを持っていることに気付いたんです。そこで、今年の2月に「ひまわり高齢者レク支援センター」という組織を立ち上げて、仲間に登録をお願いすることを始めました。

-ホームページを見ましたが、多彩なスキルを持つ方々が名を連ねていますね。

笑いヨガの仲間だけでなく、村で知り合った方々にも声をかけ、少しずつ増やしていきました。今では、私以外に16名の方々が登録してくださっています。ダンスやストレッチのような運動系だけでなく、料理や筆文字のような文化系の講習もあります。もちろん青木さんも、講師の一人です。

沖縄から南牧へ移住

-笑いヨガの講師は、いつ頃から始めたのですか?

私は南牧に来る前は、沖縄で約10年間暮らしていました。もともとアロマセラピーやエスティシャンをしていましたが、ある時お客様から「運動をしたい」と言われ、自分でもできる運動を探すなかで、笑いヨガを知ったんです。体を結構使うのにハードではないところが気に入って、2015年にインストラクターの資格を取りにインドまで行きました。そこからですね。

-沖縄でも笑いヨガを教えられていたんですね。南牧へは、どのような経緯で移住されたのですか?

今の主人と沖縄で出会って結婚したのを機に、1年間の東京暮らしを経て移住しました。当時、主人は東京で仕事をしていましたが、もともと南牧の出身で、いつか戻りたいと思っていたようです。ちょうど結婚したタイミングで空いている家が南牧で見つかったので、引っ越しました。

-海が身近な沖縄から山村の南牧に来て、ギャップがあったのでは?

住む場所へのこだわりはなかったので、寒さは苦手ですが違和感はなかったです。私自身も出身は高崎市なので、目に見えない何かによって同じ群馬の南牧に導かれたようなご縁を感じています。

-南牧に来てからは、笑いヨガをどのように広めていきましたか?

初めはボランティアとして参加者を募り、自宅で教えていましたが、もう少し活動範囲を広げたいと思い、村のイベントや懇親会に参加して知り合いを増やし、口コミで広めてもらいました。そのうちに、講師の依頼が自然と増えていきました。また、「道の駅 オアシスなんもく」で週に1日、販売員をしていますが、出品者や観光客の方々とお話できるので、知り合いの輪を広げるのに役立っています。

高齢者にもレクチャーしてほしい

-「ひまわり高齢者レク支援センター」では、今後どのようなことを進める予定ですか?

施設でイベントを開くのが難しい状況が続いていますので、できることから始めていきたいと思います。内容も、高齢者にレクレーションを提供するだけでなく、今回のように高齢者がレクチャーするイベントや、介護をするご家族の方がリフレッシュできるような活動を考えています。南牧には多様な知識や技術、スキルを持つ高齢者がいらっしゃいます。そうした方々がレクチャーする場をつくることで教える楽しみを持っていただき、健康長寿のお役に立ちたいと思います。特に男性の方はレクに参加したがらない傾向があるので、教える場を作れば手を挙げる方が現れて、聞きに来る男性参加者も増えそうです。

また、今後は介護士や施設職員などのスキルアップや、介護者がリフレッシュできるレスパイトケアにも力を入れたいと思います。講座は南牧で行いますが、参加者は、近隣の地域や県内から広く募集します。その後は、全国展開も視野に入れています。

-高齢者だけでなく、ご家族や介護職員も対象なのですね。最後に、意気込みを聞かせてください。

高齢者やそのご家族に元気を届けることが、私にとって一番のやりがいです。そのためにも、講師の方々と協力しながら、できることを一つずつ実現していきたいですね。あと、今回のようなイベントには村外からも人が集まりますので、そこから南牧との接点が生まれることも期待したいです!

話を聞いて考えたこと

有賀さんが立ち上げた「ひまわり高齢者レク支援センター」では、「高齢者にレクレーション」「高齢者がレクチャー」「介護者などへのレスパイトケア・サポート」というサポートの3本柱を掲げている。このなかで、高齢者が教える側にまわる「高齢者がレクチャー」は、受動的にサービスを受けていた高齢者が能動的になれる点が素晴らしいと感じた。また、村内の知り合いと話したいと思っても訪問するには手間と勇気が必要だが、こうした場が幾つも生まれれば、村内で活発に人が動く状況も生み出せると思った。

ちなみに、私もこの機に「自分史制作、聞き書き」という怪しげなスキルで講師に登録させていただいた。

ひまわり高齢者レク支援センターのホームページ