【なんもくびと】ソロキャンプ場を2年かけてオープンさせた塚原陽子さん

5月2日、南牧村大塩沢地区の高台に、ソロ(ひとり)専用のキャンプ場「One and …Nanmoku Another BASE」が正式にオープンしました。原野の開拓から2年をかけてキャンプ場を作りあげた塚原陽子さんに、今の思いを聞きました。

塚原陽子さん

ーグランドオープンを迎えた今の気持ちを聞かせてください。

塚原 本当はもっと早くオープンしたかったんですが、思い通りに作業が進まずに時間がかかってしまいました。今回、ようやくトイレとシャワールームが使えるようになったので、ホームページも立ち上げて正式にオープンしました。一安心と言いたいところですが、これからもやることは多いので、まだまだこれからです。

男女別のシャワーとトイレ小屋
小屋の内部

ーキャンプ場を作る過程では、さまざまな困難があったと思います。特に何が大変でしたか?

塚原 キャンプ場に水道を引くまでの作業が、本当に大変でした。当初、沢から水を引いたら水圧が弱すぎて、水栓トイレが使えなかったんです。業者の方に水をためるタンクを高い位置へ移動してもらって水圧を高め、ようやく使えるようになりました。この作業に半年以上かかりましたね。

ーシャワーとトイレの小屋も自作したんですか?

塚原 こちらは業者の方と私との共同作業です。ハウスメーカーの物置2つを接続させてシャワーとトイレ小屋を作りましたが、シャワーユニットを入れるのに高さを設けたり、断熱材を入れたりするのに思いのほか時間がかかりました。私はものづくりに関しては素人でしたので、色々と勉強したり調べたりするうちに時間が過ぎて、予想以上に難航しました。

コンテナを利用した手作りの管理棟

ーところで、なぜ南牧村にソロキャンプ場を作ろうと思ったのですか?

塚原 もともとキャンプ場から始まったのではなく、村の活性化に関わりたかったんです。私の父の実家が下仁田町に残っていたので、実家を活用して町おこしをしたいと父に相談したら「町おこしなら南牧村のほうがいいよ」と言われたのがきっかけですね。そこで、村おこしの企画を幾つも考えて村長に提案しました。そうしたら、村の特産品としてエルダーフラワー(ハーブの一種)のシロップを作る提案だけOKが出たので、2016年に「道の駅オアシスなんもく」の近くに土地を借りて栽培を始めました。4年後に花が採集できるようになったので、本格的に栽培しようと思い、栽培候補地を幾つか探してもらいました。その一つがここだったんです。景色がよい場所でしたので、エルダーフラワーを栽培しながらキャンプ場も作りたいと思い、ここを借りて2020年から作業を始めました。

ー当初は、神奈川県から通われていたんですよね。

塚原 その頃は神奈川で会社に勤めていましたので、休日に往復7時間くらいかけて通っていました。会社を退職した2021年からは母の実家がある高崎から通い、昨年、村内に家を借りて移住しました。

ー通いながらのキャンプ場作りは相当大変だったと思います。

塚原 もともとここは私の背丈くらいの草がぼうぼうと生えていて、石もゴロゴロ転がっていた原野でしたので、まず整地から始めました。村に手伝っていただきながら自分でも重機を動かして少しずつ整地を進めましたが、当時は通いながらの作業でしたので思いのほか時間がかかりました。次に水道を引き、管理棟とトイレを作り、テントを張るためのウッドデッキを幾つか作りましたが、こちらも予想以上に難航しました。

ー資金面での不安はありましたか?

塚原 整地や水道工事は村にも支援をしていただきましたが、基本は自己資金でまかなっています。クラウドファンディングにも挑戦して資金を調達しましたが、既に予算をオーバーしたこともあって、早くオープンしたいと思っていました。

ー昨年からは試験的にオープンしているそうですね。

塚原 キャンプ場作りの過程をインスタツイッターで発信していますが、それを見た方や口コミで知った方々にはソロキャンプに来てもらっていました。既に常連の方もいて、週末には複数名にお越しいただく日もあります。

取材日には、来場者がテントを設営していた
キャンプ場からは、南牧の名峰、鹿岳が一望できる

ー今後の計画を教えてください。

塚原 テント場にナチュラルガーデン風の庭を作ったり、炊事場を作ったり、管理棟にテラスを作ったりと、今後もやりたいことは盛りだくさんです。今も現在進行形で色々作っていますので、常連の方からは「来るたびに変化があって楽しい」とよく言われます(笑)。あと運営が軌道に乗ったら、土地を借り増ししてキャンプ場を拡張したいと思っています。ただプライベート感がある静かなソロキャンプ場にしたいので、テントサイトの数は、あまり増やしたくないですね。実際にお客様同士が会話することもないですから。

ー最後に、このキャンプ場のアピールポイントをお聞かせください。

塚原 お客様からは、「景色もよくて落ち着ける」という声をよくいただいています。私は、夕方から夜にかけての景色が好きですね。暗くなってきてテント場の照明が付くと、幻想的でとてもきれいなんです。課題はまだ多いですが、多くの皆さんにここを知っていただき、ソロキャンプを体験してほしいですね。

キャンプ場の一角ではエルダーフラワーを栽培中
テントサイトは全部で11区画

取材を終えて

私が取材した5/3午後には、4名のソロキャンパーが受付を済ませてテントを張っていた。うち2名の方と少し会話をしたところ、群馬県内でも静かに過ごせるソロキャンプ場は少ないので前から来たいと思っていた、と話していた。ソロ専用のキャンプ場は全国的にも多くないので、ひとりで静かにキャンプができるこの場所は貴重だと思う。まだオープンしたてなので、今後の変化が楽しみだ。

ホームページ【One and…Nanmoku Another BASE】

(↓参考 以前取材した記事)