【なんもくびと】 自動車整備にとどまらない「PIT MASTER」を開業した鈴木雄祐さん

村内の千原地区で自動車整備ショップ「PIT MASTER(ピットマスター)」を11月に開業した鈴木雄祐(すずきゆうすけ)さん。実は4年前にもパン工房の職人だった鈴木さんを取材しているので、今回が2度目の登場です。単なる整備にとどまらないユニークなショップを立ち上げた経緯と今後の抱負について、鈴木さんに聞きました。

11月23日に「PIT MASTER」を開業した鈴木さん

車を整備する時間を共有できるガレージショップ

ー開業おめでとうございます。まず、どのようなお店なのかを教えてください。

鈴木 自動車整備や中古車販売がメインですが、整備の様子をガレージで見学できたり、車に対するきめ細かな要望や悩みに応える店舗として開業しました。もちろん車検や保険、レンタカーサービス、レッカー救援に至るまで、車に関することなら一通り対応できます。

ー整備が見学できるショップは珍しいですね。どのような理由で始めたのですか?

鈴木 車を整備する時間をお客様と共有できるガレージを作りたかったんです。車を整備したくても、時間や設備や技術がなくて、できない人は少なくありません。そうした人がここに来れば、整備する様子を見ながらエンジニアと会話ができて楽しめます。部品交換にしても、お客様の細かな要望に応えながら対応しますので、単なるパーツの付け替えではない「車いじり」ができるショップです。

ーとなれば、車のカスタマイズにも対応できますね。

鈴木 もちろんです。むしろ、お客様の好みに合わせた乗り心地に仕上げていくのが得意分野です。もともと私はカートレースに出場していましたので、レーシングカートのサポートやメカニックの経験を今回のショップに生かしています。

ー現在のスタッフは何名ですか?

鈴木 会社職員は一級自動車整備士の資格を持つエンジニアと私の2名ですが、その他に、カー雑誌「ENGINE」のライターをしている営業スタッフがいます。そのスタッフは国内で発売された新車を全て試乗していますので、カタログでは分からない体感も含めて、理想の一台を提案できます。

ーまるで、車のコンサルティング業ですね。

鈴木 お客様がどのような車に乗りたいのか、どのような車にしたいのかを共に考えられるショップとして開業しました。車のある暮らしというか、ライフスタイルに関わる部分までコーディネートできるのが特長です。

グランドオープン日のPITMASTER

PITMASTERの店内(ガレージ)
リフトアップされた車
駐車場には多様な車が並ぶ
ガレージ内に置かれたレーシングカート。鈴木さんがカートレースで受賞したトロフィーも展示
レンタカーサービスも展開

南牧で自分ができることを考え開業

ー「PIT MASTER」の構想を固めたのは、いつ頃ですか?

鈴木 2021年に南牧村へ移住してからです。パン職人をした後も村に残りITエンジニアとしてリモートワークをしていましたが、この村で自分ができることを考えるうちに、構想が具体化していきました。

ーこの場所でショップを開いた理由は?

鈴木 当時住んでいた家の大家さんにショップができる場所がないか相談したところ、ここを紹介してもらったんです。元々この建物はコンニャクの火力乾燥所でしたが、使われなくなって久しく、屋根には穴が開き、廃材や機械が残っていました。

ー片付けるのは大変でしたね。

鈴木 全て自力で片付けた後に、骨組みだけ残して全てリニューアルしました。銀行と取引するため2023年秋に「オクタン株式会社」を設立し、昨年の春にはリモートワークも辞めて、開業準備に専念してきました。開業まではさまざまな手続きもあって大変でしたが、この村だからこそ、これだけの広い空間が持てたと思います。

片付け、リニューアル前の建物。元々は使われてなかったコンニャクの火力乾燥所だった

ツーリングやドライブの目的地を作りたい

ー今後の抱負を教えてください。

鈴木 「PITMASTER」を、ツーリングやドライブで来る目的地にしたいと考えています。なので、近い将来、ここに飲食店を開業する予定です。南牧村に車好きやバイク好きの仲間が集まり、整備を見ながら飲食したり語り合える場にしたいですね。ただ、外からお客様が来ない平日には、地域密着型の営業展開をしたいと思います。タイヤ交換や塗装や板金などは、村内の自動車整備会社とも連携していきます。

ー開業した今の手応えはいかがですか?

鈴木 開業からまだ間もないですが、11月23日と24日の2日間でオープニングイベントを開きましたので、知名度は上がったと思います。お客様もポツポツと増えてきました。

ー最後に、鈴木さんにとって南牧村の魅力を教えてください。

鈴木 「都心から近い田舎」ですかね。しっかりと田舎なのに、首都圏からのアクセスが良く、渋滞もない。星もよく見えて、空気も美味しく、食べ物も美味しい。四季をじっくり味わえる豊かな暮らしができるのが魅力です。多くのお客様にここへ来ていただき、南牧の魅力を味わってほしいと思います。

飲食店ができるスペースも確保済。オープンは再来年を予定

取材を終えて

取材前には「PIT MASTER」がどのような店なのか、よく分かりませんでした。しかし鈴木さんの話を聞くうちに、車やバイク好きが集まる場所を南牧村に作りたいという思いが伝わってきて、店のコンセプトが理解できました。飲食店の開業は再来年になるそうですが、車の整備を見学しながら飲食ができる店舗は評判を呼びそうです。村に観光客を呼び込むには「きっかけ」作りが必要ですが、車好きやバイク好きが南牧を訪れる一つの「きっかけ」に「PIT MASTER」がなることを期待したいと思います。

◆「PIT MASTER」のインスタグラム

◆OCTAN株式会社のWeb