【インタビュー】地域おこし協力隊インターンとして村に1ヶ月間滞在した、ミュージシャンの成澤けやきさん

民族楽器を使った音楽活動を行っているミュージシャンの成澤けやきさんが、5月27日から6月28日までの約1ヶ月間、地域おこし協力隊インターンとして南牧村に滞在しました。目的(ミッション)は、自然豊かな村で音楽を制作しながら、学生や村民への演奏やワークショップを通じて、音楽で地域を盛り上げること。6月20日には「なんもく学園」でライブを開催し、120名ほどの来場者が成澤さんの演奏と歌に聴き入りました。一部の曲では学園の生徒も参加し、成澤さんとのコラボ演奏が披露されました。私も聴かせてもらいましたが、普段なかなか聴けない民族楽器の音色や音楽が新鮮でした。

ライブの翌週、今回の滞在のご感想などを成澤さんにインタビューしました。

なんもく学園で演奏を披露する成澤さん
成澤さんの演奏に耳を傾ける来場者。最前列で聴いているのは生徒たち

成澤さんの経歴、村に滞在した経緯と感想

成澤さんは東京都の出身。IT企業勤務を経て、2009年からアフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどを転々としながら、ストリートパフォーマーとして音楽活動を開始。さまざまな民族楽器を用いた音楽制作や演奏を行うプロのミュージシャンとして活動しています。

成澤さんが村で滞在していたのは、村役場からほど近い場所にある「暮らし体験民家」。私が訪問すると、一室に音楽機材が所狭しと置かれていました。滞在した1ヶ月間で、ここをレコーディングスタジオにしてアルバムを制作されたそうです。

暮らし体験民家
体験民家の一室にあるレコーディングスタジオ。

ーまず、民族楽器による音楽活動を始めた経緯を聞かせてください。

私は子供の頃から音楽が好きで、中学生の頃にギターやパーカッションを始め、高校・大学時代はバンド活動もしていました。就職した後も、週末ミュージシャンとして音楽活動を続けていましたが、民族楽器も演奏していたんです。特に、学園の演奏でも披露した西アフリカの「ジャンベ」という太鼓を好んで叩いていました。2009年にプロの音楽家になろうと決意して退職し、本格的に現地でリズムを学ぼうと、西アフリカのギニアを訪れました。その後は、アフリカのリズムの愛好家が多いヨーロッパ国内を転々としながら音楽を勉強し、路上ライブやフェスティバルへの出演などで生計を立ててきました。2013年にはベルギーに拠点を構え、民族楽器を使った音楽制作や演奏をヨーロッパを舞台に行ってきましたが、2019年に日本に帰国しました。

ー帰国した理由は何ですか?

成澤 ヨーロッパに住むと決意した時に、「3万人の前で演奏できるようになりたい」という目標を立てていましたが、その目標を達成した頃に日本のことを考える機会が増え、日本のために働きたいという思いが強くなったんです。そこで2019年に10年に及ぶ海外生活に区切りをつけ、帰国を決意しました。 

ー帰国後は宮崎県日向市の東郷町にお住まいということですが、地域で暮らしたい思いは元々あったのですか?

成澤 幼少期に大分県の日田市で過ごした原体験が強かったので、日本に帰るなら九州に住みたいと思い、九州各地で音楽ツアーをしながら下見をしていたんです。ちょうど東郷町を訪れていた時にコロナ禍が始まり、移動ができないなかで地域の方々とのご縁が深まり、畑や田んぼも始めましたので、そのまま日向市の東郷町に住むことになりました。

ー東郷町では、音楽を生かした地域課題解決にも取り組まれたそうですね。

成澤 東郷町では、オーガニックマーケットや音楽祭を開催したり、自然素材のアート展を企画したりと、さまざまな活動で集客をしました。そのなかで、音楽と教育とアートで地域課題解決に取り組もうと考え、「バンブーミュージック・ミヤザキ」を実行しました。これは、地域で増えている竹林を子どもたちと一緒に切って楽器を作り、演奏を練習して発表会を行うまでのプロジェクトでしたが、これが話題になり、宮崎のテレビや新聞などに取り上げられたんです。それを見た南牧村の友人の五十嵐亮さんが、南牧でも同じような活動がしたいと声をかけてくれたのが、今回の滞在につながりました。五十嵐さんはじめ関係者にはお世話になりました。

ーそれもご縁ですね。この1ヶ月間、南牧村に滞在した感想を聞かせてください。

成澤 村に来てまず感じたのは、自然の音の豊かさです。川のせせらぎ、鳥のさえずり、風の音といった自然の音に囲まれた環境に、音楽家としての感性が刺激されました。すれ違う時に、にこっと微笑んでくれる村人も多く、短い間でしたが温かさを肌で感じることができました。今回は1ヶ月間の活動でしたが、これをきっかけに、竹や廃材で楽器を作って川の音と一緒に演奏したり、南牧村産の野菜とか花とかを活用して、村民のアイデンティティにつながるイベントができたらいいねと、五十嵐さんと話しています。

インタビューを終えて

成澤さんの話で印象的だったのは、音楽を通じて地域に新しい風を吹き込もうとする姿勢です。普段あまり触れる機会のない民族楽器を通じて、地域の方々、特に子どもたちに新しい刺激を与えた意義は大きいと感じました。

また、今回の成澤さんの滞在は、地域おこし協力隊インターン制度を活用した好い事例になったと思います。多様な仕事をされている方々がこの制度を使って次々と来村し、活動をしてくれれば、村民や子どもたちにとって刺激になって地域も盛り上がると思いました。

今後も成澤さんは、村との関係を続られるそうなので、今後の展開を期待したいと思います。また、村でレコーディングした作品は、クラウドファンディングで制作費を集め、アルバム(CD)を発売する予定とのこと。こちらも楽しみです。(以上)

成澤けやきさん