【なんもくびと】 室内装飾品「ブリオンアート」を制作している齋藤秀子さん

ドイツ発祥の伝統工芸を発展させた「ブリオンアート(ブリオンフラワー)」の第一人者である齋藤秀子さん。約3年前に南牧に工房を構えて以来、埼玉県の熊谷と南牧の二拠点を行き来しながら、制作活動やレッスンを行っています。ブリオンアートの魅力、南牧でやりたいことなど、今の思いを聞きました。

斎藤秀子さん。制作した作品を展示した自宅にて

齋藤さんとは、一昨年(2021年)にインターン生が住民センターで開催したフラワーアレンジメント教室で知り合い、昨年末に村内の「ちょっとしたカフェ」で開催された展示会の見学を機に、話を聴きたいと思いました。

昨年末に「ちょっとしたカフェ」2Fで催された展示会

ウクライナの平和への祈りを込めて制作したアート

「ブリオンアート」とは、ドイツ発祥の伝統工芸をアレンジした室内装飾品のこと。「ブリオン」と呼ばれる金や銀の細いワイヤーに木の実、リボン、布花などをアレンジし、ハーブの香りを加えています。齋藤さんは、ドイツの伝統工芸を日本に広めた方に師事して独自に発展させた「ブリオンアート」の第一人者です。

もともと齋藤さんは、埼玉県熊谷市に店を構えるジュエリーショップで店長をしていました。来店したお客様に宝石を販売するのはもちろん、お客様の要望をじっくり聞き、その方にふさわしい商品を提案するジュエリーアドバイザーとしてご活躍されてきました。

転機が訪れたのは50代前半。宝飾の講習会に参加した時に、「ブリオンアート」の原型になったドイツの伝統工芸と出会い、造形や美しさ、繊細さ、香りに惹かれました。「私がやるのはこれだ!」と直感した斎藤さんは、工芸を日本に広めている講師のもとに2年間通い、集中的に勉強して専門資格を取得しました。その後、工芸を独自に発展させた「ブリオンアート」を開発。ジュエリーショップを退社し、ブリオンアート、パワーストーン、ハーブ&アロマの専門店舗「ペルレ」を熊谷にオープンしました。宝石店での経験と知識を生かした丁寧な接客と、お客様に似合う商品を選ぶセンスが好評で固定客が付き、わざわざ九州から訪れるお客様もいたとか。ブリオンアートの教室も開催し、学校に出向いて子供たちに教える機会も多かったそうです。

それから10数年間、娘さんと共に店舗を経営してきた齋藤さんに、第二の転機が訪れます。南牧村との出会いです。

「3年前に南牧で古民家を改装していた知人から誘われ、たまたま訪れたのがきっかけでした。古民家が建つ環境は山と川が迫っていて、私が生まれ育った家の環境に似ていたんです。空気や水も美味しくて、ここなら制作活動に集中できると思いました。そこで、ここを工房として使わせていただくことにしたんです」

南牧を拠点に制作活動を始めて約3年、月曜から木曜までは熊谷の店舗で接客、金曜から日曜は南牧の工房で制作活動を行う2拠点暮らしを続けている斎藤さん。制作の傍ら、村の住民センターや「ちょっとしたカフェ」で初心者向けに教室も開きました。今後も南牧で「ブリオンアート」を制作しながら、いずれは高齢者や初心者向けの教室を開催したいそうです。

古民家を改修した南牧村の工房(南牧村小沢)
玄関に置かれた立看板
南牧で採集したスギやヒノキの実を素材にしたリース

「自然が目に入ってくると、作品のアイデアが次々と生まれてくるのがとても楽しいですね。村で採れた木の実や葉っぱを作品にも使っていますし、高速バスで偶然知り合った方から花を頂いたこともありました。都会とは違う人間関係の豊かさを感じています」

最近では、近隣住民の方々と触れ合う時間も増えてきたと話す斎藤さん。南牧の土地柄や人柄にひかれて個性的なアーティストの方々の移住が増えれば、住民との交流を通じて新たな動きが生まれるかもしれません。〔以上〕