「道の駅 オアシスなんもく」のお休み処にて2月末まで開催中の絵画展「南牧の人々の暮らしの記録」から、何枚かの作品をピックアップして紹介します。
作品を描いたのは、南牧村の砥沢地区に住む掛川鷹一郎さん(年齢は90歳過ぎ)。掛川さんの趣味はスケッチ絵画で、これまで残した作品数は膨大。作品に説明文が付けられているのも特徴です。今回の展示会では、村の暮らしや仕事を題材にした33作品を掲示しています。
今回、掛川さんの承諾を得て、33作品から何枚かをピックアップして、こちらに掲載します。
「暮らし」編
「暮らし」編の最初に展示されている作品。昭和初期~中期にかけて各家庭で普通に使われていた「囲炉裏」が、説明文とともに描かれています。鉄瓶でお湯を沸かしたり、鍋で料理を作ったりと、ダイニングキッチンを兼ねていた囲炉裏。TVがなかった時代は、家族のだんらんの場として、さまざまな会話がされていたことでしょう。また、囲炉裏の煙が家中を巡ったおかげで暖房、乾燥、殺菌効果があり、家屋の維持保全に役立っていたことも書かれていて興味深いです。
囲炉裏の周りに置かれていた道具類が描かれています。さまざまな道具を用途によって使い分けていたことがわかり、昔の人々の知恵を感じます。
共同井戸の様子が描かれています。水道が普及する前は、地主の屋敷内にある井戸を住民が共同で使っていました。井戸の周りには水をためるタンク(防火槽)があり、火事に備えていたことがわかります。ポンプが動く仕組みが描かれているのも興味深いです。
川遊びの情景が描かれています。子どもたちにとって夏の川は絶好の遊び場だったようです。当時は子どもも多く、賑やかだったことが伝わってきます。
南牧川に住む魚として、カジカ(河鹿)と、ハヤ(ウグイ)が描かれています。昔は多様な川魚や水生生物が生息していたそうですが、今はめっきり少なくなったそうです。
「仕事」編
続いて「仕事」編。まずは、かつて砥沢地区で産出されていた砥石の採掘を描いた作品です。昭和20、30年代当時は、多くの人々が砥石採掘に従事していました。砥石生産に関しては、これを含めて8作品が展示されており、隆盛を極めた砥石生産の様子が伝わってきます。
当時は林業も盛んでした。この作品では、木の倒し方が描かれています。南牧村は傾斜地が多いので、木の倒し方にも一工夫あったようです。
そりを使って、倒した木材を運ぶ様子が描かれています。急な傾斜地には人力の運搬具が入れないため、木のレールを作って運び出していました。すごく危険で大変な作業ですが、よくぞ運搬したものです。
「景観」編
最後は「景観」編です。この作品では、砥沢地区の手前に掛かる「蝉の橋」で出征兵士を村民総出で見送った様子が、説明文とともに描かれています。但し、これは開戦初期のことで、戦争が激しくなった昭和18年頃には、出征も秘密裏に行われるようになり、絵のような行事は見られなくなったようです。
以上、「暮らし」「仕事」「景観」の各ジャンルから何枚かをピックアップして紹介しました。絵に添えられた文章を読めば、当時の様子がリアルに伝わってきます。これら掛川さんの作品は、今となってはとても貴重な生活の記録であると、改めて思います。(以上)