山村集落を一望できる体験型民泊宿「Mattyの古民家(2棟目)」

村内で民泊宿「Mattyの古民家(マッティーの古民家)」を営む小林真奈さんが、本年3月に2棟目の民泊宿を開業しました。展望が素晴らしい古民家の宿を見学しながら、2棟目にかける思いを聞きました。

集落を一望できる古民家の宿

2棟目の宿は、南牧村から上野村に至る県道45号沿いの桧沢(ひさわ)集落内にあります。県道を右折し、車がぎりぎり通れる急坂をおそるおそる登っていくと、右側に古民家の玄関が見えてきました。ここが「Mattyの古民家」2棟目の民泊宿「無限清風 ~風、薫る~」です。1棟目と同じく空き家になっていた古民家をリノベした一組限定の民泊宿で、とにかく展望が抜群!庭先にはバーベキュー場や露天風呂も作られていました。

出迎えてくれた小林さんに、早速、宿を案内していただきました。

よくぞこんな場所に建てたと思わせる急斜面に建つ2棟目の「Mattyの古民家」からの景観。宿までは急坂なのでお客様を送迎しているとのこと
展望テラスからの眺め。山々に囲まれた山村集落が眼下に広がる。夜には満点の星空も楽しめる
庭先にあるバーベキュー台。南牧で採れた椚石(くぬぎいし)が素材
これも庭先に設置されたヒノキの露天風呂。取材時には屋根作りの真っ最中

玄関から室内に入ると、昔ながらの古民家の風情を残しながら改装を施した空間が広がっていました。各部屋は清掃が行き届き、アンティークや民具好きのお客様にとっては、たまらない魅力だと思います。

私が特に心を惹かれたのが「文豪の間」。母屋から廊下を歩いた離れにある小部屋で、小窓からは集落を展望できます。この部屋に籠もれば、かつて旅館に逗留して作品を執筆した文豪気分を味わえそうです。

広々とした大広間。家具や調度品へのこだわりを感じる
キッチンとダイニングテーブル。家具は洋物のアンティーク品で揃えられている
離れにある「文豪の間」。小林さんご推薦の本が置かれている。山々や集落を遠望しながら落ち着いて創作活動できそう

2棟目のコンセプトは「体験」

室内外を一通り見学させていただいた後、2棟目の「Mattyの古民家」を開業した経緯を小林さんに聞きました。

小林さんは2023年12月に民泊宿「Mattyの古民家」を、村内の大日向地区で開業。自らが鑑定する占い付きの宿泊プランが評判を呼び、1日1組限定とはいえ1年以上先まで予約が埋まるくらい人気を集めています。

そんな小林さんに2棟目の物件を紹介したのは、近所に住む花農家の方でした。「『真奈ちゃん、すごい物件があるよ』 って言われて見に行ったのが、この古民家だったんです。2棟目を作ることは念頭になかったんですが、展望が素晴らしくて家の状態も良好だったので、心が動きました。ちょうど1棟目の民泊宿も集客が順調でしたので、思い切って借りることを決めました」

小林さんは昨年7月から古民家の改修を開始。身内であるパートナーと兄が工事を担当してくれたので、出費を抑えられたそうです。本年2月に工事が終わり、3月1日に2棟目の「Mattyの古民家」をオープンしました。1棟目とは違いがあるのでしょうか。

「1棟目の売りが占いだとしたら、2棟目の売りは『体験』。素泊まりでも展望やバーベキューを楽しめますが、陶芸やアロマバーム作り、古民家巡り、秘境ツアーなどから一つを選べる体験型宿泊プランを用意しています。陶芸とアロマバーム作りが特に人気ですね。もちろん素泊まりでも、展望やバーベキュー、囲炉裏体験などを楽しめます」

ちなみに「Mattyの古民家」の宿泊客は、両方とも女性が9割。1人で来る人もいれば、複数人で滞在するグループもいます。​小林さんの占いや人柄、古民家に惹かれたリピーターも多く、1棟目の宿泊客が2棟目に惹かれて泊まることもしばしば。本年4月に南牧村に着任した地域おこし協力隊の女性も、昨年この宿に泊まってファンになり、ついに移住を決めたそうです。

集落を展望できるテラスで日向ぼっこ。天気が良い日は気持ちよさそう
村内在住の陶芸家が指導する陶芸体験。陶芸家の食器は宿に置かれているので、それを気に入って陶芸体験に来る宿泊客も多いとか

地元食材へのこだわり

ところで、同じ村内とはいえ2つの民泊施設の運営は大変ではないのでしょうか。

「民泊宿は両方とも一日一組限定の貸切タイプですので、管理人が常駐するわけではありません。お客様がチェックインする時や食事を届ける時など、私が宿に顔を出すのは滞在中2、3回ほど。お手伝いさんもいますし、両方の宿にお客様がご宿泊している時でも、支障なく運営できています」

そんな小林さんがこだわっているのは、地産地消。デリバリーで届けている食事のほか、宿で提供するお菓子やケーキ、コーヒー、ハーブティーなどを、村内や近隣の町(下仁田)の飲食店や生産者から調達しています。村内のハイヤー会社に宿泊客の送迎を頼むことも増えたとか。

「古民家と南牧の魅力をお客様に伝えることは常に意識していますし、お客様も、本当にここに来たい方々が来られています。宿泊料を上げたのもその一環で、ただの民泊宿ではない自信があります」

小林さんが話すように、日本にただ一つの占い付き民泊宿という付加価値はもちろん、歴史ある古民家と調度品に囲まれて過ごす魅力は決して安くないと思いました。

最後に、移住してからの感想を聞きました。

「南牧に移住してもうすぐ2年経ちますが、何といっても心持ちというか、自分のマインドが変わりましたね。南牧は心がおおらかな方ばかりですし、前に高崎で仕事をしていた時と比べて心が充実した日々をすごせています。それがお客様へのおもてなしにも影響して、相乗効果を生んでいます。あとは食生活が変わりました。移住前は外食ばかりでしたが、南牧に来てからは毎日自炊しています。朝食も、大根が入った味噌汁と納豆だけになりました。ご近所さんからはお野菜をたくさんもらいますし、菜園のやり方とかも教わったりして、すごく楽しいです」

地区の清掃活動に参加したり、新年会を宿で開催したりと、地域との関係性をすごく大事にしている小林さん。住民からも応援されていて、それも小林さんの活力の素になっているようです。

宿で提供しているデリバリーとアメニティ

2棟目がオープンして間もない「Mattyの古民家」ですが、早くも小林さんは次の民泊宿も構想しているとか。占い、体験の次は、どのようなコンセプトの宿になるのでしょう?今後も目が離せません。(以上)

(注)一部の写真は、小林さんよりご提供いただきました。

<「Mattyの古民家」インスタグラム> https://www.instagram.com/kissa._________?igsh=MWEyOXd2c2x0NnljMw%3D%3D&utm_source=qr

<「Mattyの古民家」公式HP> https://www.matty-no-kominka.com