南牧でしか入手できない希少酒「黒瀧山」を飲む

村内で使える商品券を消費するため、村内の酒屋「井部酒店」で南牧の地酒「黒瀧山(くろたきさん)」を購入しました。せっかくの機会なので、売り出した経緯や店舗の歴史などを、店主の井部雅行さんに聞いてみました。

井部酒店

希少酒「黒瀧山」を販売した経緯

南牧村でよく飲まれている日本酒といえば、聖徳銘醸(甘楽町)の「江戸一」ですが、役場の近くにある井部酒店では、ここでしか入手できない「黒瀧山」というレアな地酒を販売しています。

酒棚の一角に置かれた「黒瀧山」

井部酒店が「黒瀧山」の販売を開始したのは、今から20年ほど前(店主の曖昧な記憶によれば)。「水芭蕉」や「谷川岳」などの人気銘柄を持つ川場村の永井酒造から提案があり、南牧独自の銘柄(プライベートブランド)を開発したのがきっかけです。南牧人なら誰でも知っている「黒瀧山」と名付け、井部酒店だけが扱う独自銘柄として販売を開始しました。

売り始めて10年くらい経った頃(これも曖昧な記憶)、聖徳銘醸に製造元を変更して今に至ります。原酒となっているのは「鳳凰聖徳 特別本醸造」で、スッキリして少し辛口なのが特徴。「江戸一」と飲み比べると、味の違いがよくわかります。

製造元はラベルに記載されています。

発売当初は道の駅「オアシスなんもく」でも取り扱っていましたが、酒類の販売には免許や販売員が必要なこともあり、現在取り扱っているのは井部酒店のみ。南牧でしか入手できない希少品です。店内には、販売開始時に作られた貼紙が今も展示されています。

「本店オリジナル限定販売」と記されています

最初は小さいサイズもあったそうですが、現在売られているのは1升のみ。1ヶ月に約10本、年間に約120-130本くらいが買われていて、売り切れそうになったら製造元に発注しています。観光客が南牧土産として店に立ち寄り購入することも多く、遠方に住む方が電話で注文して配送することもあるそうです。

井部酒店の歴史

伝統的なたたずまいの井部酒店。その歴史についても聞いてみました。

大正時代に創業した井部酒店の伝統的なたたずまい

井部酒店の創業は大正7年(1918年)と、105年前のこと。現在の店主である井部雅行さんは3代目で、20歳の時から50年以上にわたり店を守っています。

村内の各地区を車で巡回し、注文を聞いて配達するのが昔から変わらない営業スタイル。現在は夕方に村内を巡回して注文を取り、翌日の午前中に配達しています。日によって巡回する地区を決めていて、1回につき20軒から30軒くらいを訪問するとか。今は酒の注文が減ってしまい、米や果物、醤油、ラーメンといった食品の配達が多いそうです。

「昔は酒の注文が7割で、ケース単位でよく買われていましたが、今はスーパーで酒を買って車で持ち帰れますからね。でも村内には運転できない方や必要としてくれる人もいますので、続けています。常連さんも多くいましたが、だんだんいなくなって寂しくなってきました(井部さん)」

店主が20歳で仕事を始めた時、富岡小売酒販組合に加盟する酒屋は150軒あったそうですが、今は40軒くらいに減ってしまったそうです。南牧村の酒屋も今は3軒。これも時代の流れですが、できる限り続けてほしいですね。

お話を聞かせてくれた3代目店主の井部雅行さん