養蚕の現場を見学 養蚕体験教室を計画している塩田喜代江さんと有賀八重さん

毎月参加しているヨガ教室講師の有賀八重さんが蚕(カイコ)を飼っていると知り、実際に見たいと思っていました。その希望がかない、有賀さんと共同で蚕を飼育している塩田喜代江さんを訪ね、養蚕の現場を見学してきました。見学後には、養蚕体験を広めたいという思いを抱く塩田さんに話を聞きました。

4回の脱皮を経た「5齢」の蚕。この後に繭を作り始めます

養蚕といえば、かつては日本を代表する輸出品として隆盛を極めていました。この南牧村でも、養蚕はコンニャク作りと並ぶ一大産業でしたが、近年では外国産に押され衰退しています。

こうした中、繭の生産量が日本一の群馬県では、国内唯一の蚕糸研究機関である「蚕糸技術センター」を中心に、「ぐんまシルク」のブランド化や養蚕学校の開設など、養蚕業の継承に力を入れています。有賀さんと塩田さんは、その養蚕学校の受講生。昨年から共同でセンターから卵を購入し、今年は約1,000頭の蚕を年2回、お二人のご自宅で育てています。

私が訪問した10月3日は、塩田さんのご自宅(工房)でまとめて飼育されていました。

塩田さんのご自宅の一室で飼育されている約500頭の蚕
全体的に動きを止める蚕が多い中、まだ食べ続けている蚕もいます。

蚕は何度か脱皮をして成長しますが、脱皮の前には動きを止め、眠りに入ります。これを「眠(みん)」と呼びます。今回、塩田さんが飼う蚕を2度見学しましたが、1度目(10/3)はちょうど4回目の脱皮直前で「眠」の真っ最中。目覚めて脱皮した後は5齢(4回脱皮した蚕)になり、10日くらいで糸を吐き始めます。この5齢の期間は食欲も旺盛になり、一気に大きくなります。そして、繭を作る前には食べるのを止めます。(上の写真は、2度目に見学した10/10に撮影したもの)

4回目の脱皮を前に眠っている蚕(10/3撮影)。5齢と比べるとまだ小さいです

ちなみに、今回見学した蚕が孵化したのは9月の中旬。孵化した時は黒く小さな虫でしたが、繭になるまで体が1000倍くらい大きくなるとか。こうした成長が目に見えるのも蚕の特徴です。

塩田さんと有賀さんが育てている蚕は、群馬県内で開発された「ぐんま200」という品種で、県外不出とのこと。塩田さんたちは蚕糸技術センター主催の養蚕学校を受講し、センターに申請して種を購入しました。参考までに価格は、500頭(1蛾)で500円ほど。意外と安いですね。

今育てている蚕は2回目で、1回目に取れた繭は蛾が出て来ないよう冷凍庫に保存中。今回取れた繭と合わせて、繭から糸をひく「座繰り」をした後、草木染めをする予定です。座繰り前には、繭の表面に付着した毛を専用の器具(毛羽取機)で取り除きます。

毛羽取機
昨年は、このショールが3~4枚が編めるくらいの量が採れました。

塩田さんと有賀さんが養蚕を本格的に始めたのは2020年春。今年で3年目を迎えます。

もともと塩田さんは蚕を飼いたくて、15年ほど前に伊勢崎から南牧に移住してきました。村内の大日向地区で染織教室「野の花工房」を開きながら養蚕を勉強し、村内に畑を借りて桑を栽培しながら養蚕を始めました。その時の受講生が、養蚕に興味を持っていた有賀さん。意気投合した二人は、蚕の卵から繭になるまで飼育し、繭から座繰りして糸を紡ぎ、染色して編んで作品にする一連の作業を共同で始めました。蚕の餌も、有賀さんが自分の畑で桑の葉を育て自家調達。試行錯誤しながらも、少しずつ前に進んでいます。繭の生産量は気候により変動しますが、来年は今年の2倍、最低でも1,500頭以上は育てたいと意気込んでいます。

そして、この一連の作業を養蚕体験講座にしたいと、お二人は考えています。

「養蚕の一連の作業を多くの方に体験してほしいと思い、来年から養蚕体験講座を開く計画です。受講者の方には南牧に通っていただき、蚕の孵化から繭になり、糸を紡いで作品にするまでのプロセスを体験していただきたいと思います。ただし、体験は一部だけでも構いません。養蚕をしたいけど自分の家ではできない方、蚕の成長を見たい方、絹糸から作品を作りたい方は、ぜひ受けてほしいですね。(塩田さん)」

今回話を聞いた塩田喜代江さん

塩田さんと有賀さんは、今年生産した繭から取れた生糸で作品を作り、講座をアピールしていく予定です。その作品展が、11月18日から1週間、「道の駅オアシスなんもく」で開催されますので、足を運ばれてはいかがでしょうか。