南牧名物、とらのこぱんの工房を(改めて)取材

昨年1月に、製造が一時とだえた南牧名物「とらおのパン(通称とらパン)」を復活させた「とらのこぱん」のパン工房をブログで紹介しました。あれから1年以上が経ち、今は南牧出身の20代女性2人が工房に入り、パンを作っています。パン作りにかける思いを2人に聞きました。

「とらパン」の味を継承した「とらのこぱん」は、毎週金曜、土曜、日曜及び祝日に、道の駅「オアシスなんもく」で販売しています。販売個数は1日につき約150個程度、価格は390円(税込み)。9時頃と11時頃の2回に分けて出荷していますが、常連客のほかギフトでまとめ買いするお客様もいて、早い日は昼前に完売してしまうくらいの大人気です。

道の駅で販売されている「とらのこぱん」。今も大人気
村内・桧沢地区のパン工房

現在「とらのこぱん」を作っているのは、市川莉沙(いちかわりさ)さん(24歳)と岩崎香里(いわさきかおり)さん(24歳)。2人は南牧出身の同級生。昨年夏に前任者からパン作りを引き継ぎ、現在は「とらのこぱん」を事業化している株式会社サンエイト企画の社員として働いています。

手前が岩崎さん、奥が市川さん(顔は非公開)

「とらのこぱん」の大きな特徴は、石窯と薪で焼いていることです。パン作りの日は朝の2時半に工房に入り、窯に火を入れて温めるところから作業を開始。小麦粉からパンを練り、窯に入れて焼き、冷ました後に袋詰めして出荷するまでの一連の工程を何度か繰り返し、昼過ぎに一日の作業が終了します。作業は2人で協力しあって進めていますが、主に市川さんは生地作りを担当し、岩崎さんは窯での作業を担当しています。

ところで、なぜ2人は「とらのこぱん」作りを引き継いだのでしょう?聞いたら、二つの大きな理由がありました。

一つは、本来の「とらパン」の味にもっと近づけたかったから。子供の頃から慣れ親しんだパンの味への思いが強かったそうです。

「『とらぱん』は、私たちが子供の頃から食べていたソウルフードのようなパンです。自分たちでこの味を守り、懐かしい味にもっと近づけたいという思いでパン作りを引き受けました。ただ全くの素人でしたので、試行錯誤しながらパン作りを勉強し、味を改良しています。本来の「とらぱん」にはまだ及びませんが、買ってくださるお客様も増えて、パン作りに少し自信が持てるようになりました。(岩崎さん)」

「小学生の頃から知っている人から『味が近づいてきたね』と言われた時は、とても嬉しかったです。顔見知りの方が贈り物として幾つも買って下さることも増えてきて、やりがいを感じています(市川さん)」

もう一つは、村に貢献したい思いが強かったから。岩崎さんは専門学校を出た後、村づくりに関わりたい思いが捨てきれずに村に戻り、道の駅で調理をしたりNPO職員として働いてきました。今はパン作りに関わる仕事を週に4日しているほか、村内のカフェを手伝ったり、陶芸の勉強をしているそうです。

「以前はNPOで働きながらパンも作っていたので、自分の時間があまり確保できませんでした。今は、自分の夢に専念できる時間を持つことができて満足しています」

市川さんは、専門学校卒業後は近隣の町村で仕事をしていましたが、一昨年に村に戻りました。今は岩崎さんと同じくパン作りのかたわら、カフェでアルバイトをしています。

「地元には同級生も残っていて知り合いも多く、その中で働きたいと思っていました。自分ができることを探すなかで出会ったのが、子供の頃から親しんでいたパン作りだったんです」

2人とも一時は都会暮らしに憧れたそうですが、自分がやりたいこととの違和感があったという点で一致していました。

南牧名物の「とらのこぱん」の味を、これからも守り続けてほしいですね。(以上)

道の駅のほか、工房でもパンを購入できます
パンを焼いている窯